ベルナール・アルノー、語る

聞き手イヴ・メサロヴィッチ
日経BP社

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る

ルノーの自伝的なもんなんだけど、サブタイトルが「ブランド帝国LVMHを創った男」ってしぬほどダサいな。ガチであり得ない。
ルノーがこれ知ったら「俺の美的センスから外れすぎててあり得ない」って怒って、日経BPを買収して解散して関係者はセーヌ川に浮かぶんじゃないだろうか。


P32〜P33

Q 理工科大学に進んだのは自分のためですか? ファミリー企業の一員として、親族の期待もあったと思いますが。
A 入試の頃は、最難関を突破することが目的でした。どうせ勉強するなら、一番上をめざしたかったのです。18歳で試験を受けたときには、先のことは何も考えていませんでした。両親が一番いい学校だと勧めてくれたので、挑戦したのです。でもこのような試験勉強は何より貴重な経験です。入試のために学ぶ科目が、将来の教養につながるのですからね。

P33

Q それがビジネスと学問の共通点なのですね? 勉強しなければ、成功できないのでしょうか?
A はい、断言できますよ。

P33〜P34

一番驚いたのは、父が理工科大学を卒業したばかりの私に、事実上会社経営を任せてくれたことです。従業員1000人ほどの中小企業でしたが、三年後の25歳のときに社長になりました。

なんだこの御曹司っぷり。
P39

Q しかしアメリカ人も新しいブランドを創り出し、驚くべき速さで市場に参入しました。ポロ・ラルフ・ローレンカルバン・クラインですが……。
A 確かにアメリカで生まれたブランドは強いですね。しかしたかだか20年、一世代の成功にすぎません。なかには確かに素晴らしいブランドもありますが、ディオールルイ・ヴィトンのような神話的な存在感はありません。ディオールやヴィトンにはアメリカにはない歴史があります。それが夢を与えるのです。スポーツ系のブランドとは違いますよ。

なんだろう、この上から目線。
P42〜P43

 実際、私にもミスはありますが、失敗したと感じたことはありません。確かにもっと早く決断すべきだったと思うことはあります。テクノロジーの分野では、マイクロソフト社への投資を見送ってしまいました。10年前の苦い記憶です。

すごいミスだ。
この話した時点で1999年っぽいので、その10年前ですね。


P89にはシャトー・ディケムの話。
LVMHに加わった今でも、サリュース伯爵が蔵元(シャトー)の責任者なので、ブドウが不出来なら出荷しないという選択をできるようにしているよ、という話。


P93
(ひとしきり1999年夏のオートクチュール・コレクションでのジョン・ガリアーノ率いるディオールをほめたたえた後)

Q 競争相手の作品についてはどう思われますか?
A 見飽きましたね。何シーズンも変わり映えがしません。

すばらしい。最高の上から目線。
P107

ピノーがグッチで展開している戦略は、納得のいくものですか?
A LVMHの戦略をミニチュア化したものだそうですね。真似されるのはまんざらでもありませんが。商売柄、模倣されるのには慣れているから驚きません。
 むしろ、どうかなと思いますね。私の考えでは、高級ブランド品産業で企業グループが成り立つには、中核となる「本物のスターブランド」が必要です。このようなブランドは永続性、強力なキャッシュ・フロー、長期にわたる安定成長、という三つの条件を満たしていなければなりません。世界でもこの条件を満たしているブランドは、5本の指で数えられるほどです。カルティエルイ・ヴィトン、ドン ペリニョンくらいでしょうか。これらのブランドを中核とすれば、本物のグループを結成できます。しかし、グッチでは無理ですよ。モードに偏りすぎているため、キャッシュ・フローも弱いし経営に波があります。だからこそLVMHは併合を望まず、業務提携だけを結ぶことで、グッチに欠けている切り札を与えたかったのです。

「与えたかったのです」……。
P119〜120

Q いつの日かグループの名称をアルノーに変えるつもりはありませんか? ミシュランディオールの名が会社名になったように……。
A どの時代でも、会社名になった個人は、名声を博した製品のクリエーターです。ミシュラン然り、ディオール然りです。しかしアルノーという製品はありません。伝統的なブランドを束ねて企業グループを設立しましたが、私はその名声だけで十分です。

P120〜P121

Q あなたのビジネスには、マーケティングは欠かせません。あなた個人はマーケティングの結果と自分の直観のどちらを信じますか?
A 一定のリサーチは実施しています。ただし、仕事上の誤りを避ける効用はありますが、成功のヒントを与えてくれたことはありません。成功は予測できませんし、直観に頼るしかありません。しかしリサーチによって、商品が売れない原因を突き止めることはできます。香水のボトルのデザインや外観が、地域や国によっては見向きもされません。大きな成功はいつも後からそれと知れます。時には漠然と予感できることもありますが、それ以上ではありません。それにしても、香水のジャン・ポール・ゲランのような偉大なクリエーターの直観はやはり大したものですよ。

P126〜P127
(ギャップやカルバン・クラインといったアメリカのブランドについて聞かれて)

A 確かに成功しているようですね。しかし今の顧客はブランドを組み合わせることに抵抗を感じませんし、それはいいことだと思います。ギャップのジーンズにヴィトンの靴をはき、ディオールのベストを着ても平気です。
 今の顧客は自由を求めています。誰かの選択を押し付けられるのはいやなのです。それがセフォラが成功した理由です。自分の目で選び、自分の美意識に適ったものを買う。それが現代です。単一のブランドをユニフォームにする時代は終わりました。価格も適当に選べます。ギャップは安いわりに品質が良い。そうは言っても、このようなブランドの寿命は、創造性を感じさせる正統派ブランドほど長くはないと思います。大衆向けのプレタポルテを専門とするこの手のブランドは、本物のデザイナーの創作を後から追いかけているのです。低価格の製品を売り出すために、短期間でイメージを真似ようとしますが、本物のブランドは一朝一夕にはできません。
 品質の世界は甘くないのです。ディオールジョン・ガリアーノジバンシィのアレクサンダー・マックィーン、ヴィトンのマーク・ジェイコブスといったデザイナーの魔力に対抗できるはずがありません。顧客もよくわかっています。ギャップやカルバン・クラインのようなブランドは一過性のものでしょう。その存在も成功もブランドの力というよりは、流通のテクニックに頼っているだけです。

当然ご存じとは思うが「プレタポルテ」は既製服のことで、前出「オートクチュール」はオーダーメードのこと。オートクチュールは厳選されたブランドでしかやっておらず、超富裕層にしか売らないがモードの先端を行っているっぽい。
しかし、「流通のテクニックに頼っているだけです」とかカッコ良いなぁ。
P132

Q 革新的なデザイナーがきまって男性なのはなぜでしょうか?
A 女性を愛するのが男性だからでしょう。デザイナーは感受性の鋭い両性具有の芸術家です。女性だっていますよ。しかし偉大な画家もオーケストラの指揮者も男性がほとんどですね。モードの世界に限った話ではなさそうです。


P137〜P138にかけて、ジョン・ガリアーノのジョーク。
エドゥアール・バラデュール前首相とガリアーノを引き合わせたら、モードの話で盛り上がったそうな。で、翌日にガリアーノからお礼の電話がかかってきて、「ジャック・シラク氏との討論にはいたく感じ入った」と言ったそうな。


P141

Q 絵画と音楽のどちらが大切ですか?
A 才能ある音楽家の方をより尊敬しています。ピカソよりもモーツァルトです。音楽は並はずれた資質を要求します。それに世界的に有名な作曲家の数は、画家よりずっと限られています。優れた音楽家は天才の域に達する驚くべき頭脳を持っています。数学者に近いかもしれません。私は理系の教育を受けてきましたが、アインシュタインのことは二〇世紀最大の天才として尊敬しています。
 私の考えでは、そのアインシュタインに近いのはモーツァルトであり、ピカソではありません。それでもピカソはその時代でもっとも偉大な画家だと思いますし、私は限りなく尊敬しています。しかし大した才能がなくても絵は描けますが、ピアノでベートーベンのソナタを弾いたり、ましてや交響曲を作曲するには、長期に及ぶ修練が必要です。

ちょっと訳が難しいようで、話の筋がとらえにくい。
「理系の教育を受けてきて、私はアインシュタインこそ最高の天才だと思っている。
画家と音楽家を比べると、音楽家の方がアインシュタインに近い天才的頭脳を持っていてより素晴らしいと思う。
どっちも尊敬していますが。」
といった感じっぽい。
次のページには小澤征爾に頼まれて、妻(ピアニスト)と一緒に日本のコンサートに出演した話が載ってる。
ピアノの練習は週に数時間程度しか持ててないそうな。


P144にはわりとセンシティブな芸術的創造についての話が載ってる。まぁ最後は「興味がある人は私の行動や業績から読み取ってください」というよくわからん締め。


P151ではマッケンローとテニスで対戦した話。

ネットの向こうにマッケンローがいるなんて、アマチュアにとっては夢のような話です。タイブレークになり、私のサーブをマッケンローが打ち返せなかったときには、幸せの絶頂を感じました! 不幸にして、その幸せは一瞬で終わり、今度は彼がサーブを決めました。きっと気を悪くしたのでしょうね、目にも止まらぬスピードでした。

なんかこう、ちょっと謙虚でウィットに富んでて楽しい。


P151〜P152

Q 職業上の不安を感じることもおありでしょうね。どのようにプレッシャーに対処していますか? ストレスの解消法は?
A 簡単なことですよ。不安やストレスが多いときには、早く床についてすぐに寝てしまいます。そして朝早く起きるのです。私は朝型ですし、目が覚めたときにはストレスも完全に消えています。


P152には宗教の話。司教たちが共産主義の思想にのめりこんでいた時期があって奇妙に感じた、と。でもそもそも信仰心は持ってますよ、と。


P221あたりでグランゼコールを重用するエリート主義に異を唱えている。


P224〜P225
共産国家の資本主義受け入れの話。
ソヴィエトはスピンして弾け飛んだけれども、中国はうまく現状認識してやってる。
中国は自由化がまだまだ足りないけど、多民族国家なので強力な国家権力を維持するためにはしょうがない部分もある。


補足すると、ソヴィエトは共産主義から資本主義を受け入れる段階で、その瞬間に各国営企業のトップだった人間がその企業のオーナーになっちゃったから、オリガルヒ(新興財閥)となって制御が難しい状態っぽい。プーチンも手なずけたり対決したりっぽい。
中国はあるんだかないんだかわからない法をなぁなぁで運用して思うがままに寡頭体制でやってるっぽい。