新世界より

貴志祐介
講談社文庫

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

マジでクソ。
SF的舞台背景を持っているが、SFでは断じてない。
特にハードSF的な考証は全くなされていない。
適当に思いついた要素を突っ込んでみたってだけで、それが具体的にどのように相互作用して、どのような世界が出来上がるか、というところが全く検討されていない。
Amazonの書評見ると「SFは読んだことないけど楽しめました!」みたいなのが結構あるけど、これは当然で「SF好きには耐えられないクソ小説」。


魔法が使えるんだが、「イメージ出来さえすれば無限に力が取り出せる」ということになっていて、なぜか船は走らせられるが空は飛べない。ほんとかよ。
トタン板にでも乗って風に向かって滑らせれば浮くだろ。
こういう適当なルールが世界観を無茶苦茶にする。
イメージさせる難易度でいったら、「投石機で投げた巨石を空中で打ち砕く」とかの方が難しいだろう。
火を燃やすとかさ。


中巻P342
茶道用語が頻出する。
ここまでに茶道教室が行われている説明はないので、茶道はあまり一般的ではないという意識で読んできたのに、突然年端もいかぬ主人公が茶道用語を流暢に使いこなす。
おかしい。違和感がありまくる。


実は年取って茶道習ったので、
言葉知ってるんですよ。
という言い訳は通用しない。
年取ってから過去を振り返った時に、こんなに詳細に説明できるはずがないからだ。用語を知ってれば別だが、知らないのにこんなに覚えているわけがない。


最終的に神の如き力をえて、無限に思い出せるんだよ。
という言い訳も確か序盤に「物忘れがある」と言ってたのでありえない。



中巻P375
肺胞という言葉が出てくるが、「肺」という言葉が入るべき所に無理矢理使ってる。前にも「肺胞全体に」という用例があったが、イメージすると非常におかしい。
肺胞というのは肺の内側を埋め尽くしていて、一つ一つは100〜200μmしかない物であり、それを知っている人間にとってはまともな形ではイメージできない。



中巻P436
太陽系の中で発動される呪力は太陽に由来。バカな文系が考えそうなネタだ。
だがそれは良い。
それよりも量子論とか出てくる。
当時明らかに知られてない技術(この世界観だったら当然禁書だろう)もあっさり書いてるし、もう整合性を取ろうという気がないんだろうか。


下巻P56
スーパークラスター爆弾www
アホすぎる。
この中だと一番ありうるのはガスだろ。
塩素くらい頑張ればできるはずだ。



下巻P290前後
狭い街にこもって生活してるはずなのによくもまぁ地名がわかるもんだなぁ。



一番最後に種明かしがあるけど、相当前に読めてしまう。
このラストの敵にも少し感情移入させないと話としては深みが足りない気がする。
逃げ落ちた二人の話とか誰かに語らせたら良かったんじゃないかね。


ともかく。
この本は読む価値がない。
なんとなくだけど、アーシュラ・K・ル=グインの影響を受けているのではないかなと思った。
「闇の左手」とか、ゲドのトンネル歩くところとか。

こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)

こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)