フラッタ・リンツ・ライフ(スカイ・クロラ4巻)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

森博嗣
中公文庫


主人公はクリタ・ジンロウ。

草薙水素が基地司令を勤める基地に赴任
前半サスペンス風味。
相良の研究の結果、セックスでキルドレでなくなるという驚愕の事実がわかる。
草薙水素がサンプル。
相良の身に危険が迫るも、ジンロウが逃がす。
相良が草薙水素を殺そうとし、ジンロウが守るも怪我。
ジンロウはそのまま隔離。
大規模作戦で駆り出され、ティーチャ相手にチーム丸ごと墜とされる。


かなりのラブストーリーっぷり。割と好きな感じだ。



全体通して気づいたこと。
地の文だと名前が漢字表記に、会話文だと片仮名表記になる。




P13 マリファナですね。

「お酒って、いい匂いしない?」
「しない。ガソリンの方がいい匂いだ」
「じゃあ、何? 私にガソリン飲めっていうの?」目で笑いながら、フーコが口を尖らせる。「そんなのさ、煙草吸ったら、めっちゃ危ないじゃん」
「吸わなきゃいい」僕は言った。「どうせ煙草じゃないだろ?」
「吸ってないわよ、そんな」
「煙草の匂いじゃないよ」
「それはね、香水」


P53

「スカートで飛んでいたんですか?」土岐野がきいた。もちろん、ジョークだ。


P65

「飛行機の中でどこが一番無駄な動きをしているか、わかるか?」片方の眉を吊り上げて彼がきいた。

P66

「一番は、プロペラだよ」彼はそういって、鼻から息をもらす。

なんか、ジェットエンジンがあるからプロペラが不要となっていった事は事実であって、それがまだ姿を現していない世界を構築して、予言めいてそれを語らせるのは自己満足の極みだと思うんだよね。


P68 一人の方が楽な感覚?

フーコは悪い人間じゃない。たとえば、同じ部屋にいても、ストレスにならない数少ない人間だ。そうではない人間は、何億倍もいるのに。
 だけど……。
 それでもなお、いない方が良いとときどき思ってしまう。もちろん、そう思うのは、彼女の躰が僕に触れているときだ。きっと、ストーブみたいな存在なのだ。近くにいてほしいけれど、触ったとたん嫌になる。

ストーブはStoveだから、著者の内部ルールによるとおそらく「ストーヴ」が正しいんじゃないか?
と思ったら、vとbの使い分けはこの人のルールではなかった。
やれやれ。俺の妄想か。


P92-93 大人の考え方

 心配か……。
 僕は考える。
 あの男は、きっと草薙水素が好きなのだ。
 それだけのこと。
 心配だなんて、引出の奥に仕舞ってあったみたいな上品な言葉を持ち出してきたけれど、心配している姿を、草薙に見てほしいのだ、きっと
 結局、大人って奴は、自分が好かれたい、という動機しか持っていない。だから、自分を好きになってくれる可能性のあるものにしかアプローチしない。そういうふうにできているのか、あるいは、そういう気持ちしか、働くなってしまったのか、ようするに、他のいろいろな感覚が錆びついてしまった、ということだろう。
 虫を触ったら面白いとか、草の根っこを引っこ抜くとすっとするとか、高いところから飛び降りたら気持ちが良いとか、そういった感覚を、すべて自分には無駄なものだと処理してしまった。その結果できたものが、つまり大人だ。そういうのと、大人しい、というのだろう、たぶん。
 では、自分にとって無駄ではないものとは何か。それは、自分に利益をもたらす対象だけ。自分を好いてくれて、自分に快楽を与えてくれるもののみ。それだけが生きる目的になる。それが、女だったり、金だったり、それとも名誉だったり。
 ああ、なんてつまらない。


P183 沈黙の評価

日は落ちていた。暗い道をタイヤの音がどうどうと響く。小刻みな震動がずっと一定のまま続く。草薙はラジオをつけなかったから、車内は沈黙に包まれていて、重苦しかった。けれど、こういった状況が僕は気にならない。おそらく草薙も同じなのだろう。無理に会話をする方が疲れる。生きている気配を消して、シートに収まっているのが適切な感じがした。


P185

 なんだろう? 愛情って。
 子犬を見たら、触りたいと思う。可愛いと感じる。でも、それが愛情だろうか。僕は僕自身をどれくらい愛しているだろう。それだって、よくわからない。大事に思う、というだけの意味なのだろうか。相良とフーコとどちらが僕にとって大事だろう。その意味でいえば、草薙の方が大事かもしれない。三人が同時に撃たれるなら、僕はきっと、何も考えずに草薙の前に飛び出すだろう。それは、そういう習性だからだ。これまでもずっと、空ではそれに似たことを繰り返してきたからだ。
 違う、愛情ではない。


P192 割と好きなタイプのジョーク

 再びハイウェイの上。
「飛行機よりも疲れるよな」加速が終わり、バックミラーを見ながら草薙が呟いた。「操縦桿から少しも手が離せない」
「ずっとランディングしているわけですからね」僕は煙草に火をつけた。「まだ、先ですか?」
「もう少し」


P281 スプリットSじゃないんですか・・・

反転してインメルマンで降下。