- 作者: 夢野久作
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それほどエロチシズムって感じでもない、大時代的な感情の起伏の激しさが多少気になる。
「ローランの歌」みたいに感極まって卒倒しまくる騎士の話よりは全然身近だけどさ。
現在は大正十五年十一月二十日。
- 私
九州帝国大学精神病科七号室の患者
- 女
隣室の患者
- 若林鏡太郎
九州帝国大学法医学教授医学部長
- 正木敬之(まさきけいし)
元九州帝国大学精神病科教室主任教授
自殺
天才肌
- 斎藤寿八
九州帝国大学精神病科前々主任教授
大正十四年十月十八日変死
- 塚江
九州帝国大学本部の事務官
- 松原
九州帝国大学総長
- キチガイ坊主
「キチガイ地獄外道祭文 ――一名、狂人の暗黒時代――」(正木著P138〜)の主人公
- アンポンタン・ポカン
青年名探偵兼脳髄学の大博士。「絶対探偵小説 脳髄は物を考えるところに非ず」(正木著上P180〜)の主人公。主張は「実は思考は生物を構成する細胞一つ一つがなしており、脳髄はその思考を繋ぐ交換機に過ぎない。よって脳髄では考えようとせず、交換機能のみに力をそそがせるべきであり。そうすることによって思考を明晰と為すことができる」。戦場に行ったジョニーはどうする気なんだろうかこの理論。
(正木著上P233胎児の夢)
胎児はたった一つの細胞に始まり生まれるまで、進化の過程を描いた悪夢を見ている。細胞のなんと凄いことか。
(上P264空前絶後の遺言書 ――大正十五年十月十九日夜 ――キチガイ博士手記)
- 田西
九州帝国大学、眼科、博士
- 金壺
九州帝国大学、耳鼻科、教授
- 鉢巻儀作(はちまき)
畠を耕す狂人
- 呉一郎
明治四十年十一月二十日生
美青年
実母と許嫁絞殺の嫌疑者
上P311の
表記によるとおそらく大正十五年四月二十六日午前二時前後に事件発生
作中作中フィルム(上P309)
大正十五年四月二十六日夜
法医学教室
- 呉モヨ子
美少女
大正十五年不明月時点で当年取って十七歳。
- 四一四号
少女
下P13で死体の台帳を直しているが、死体側の棺の番号をずらさなくてはなるまい。
大正十五年五月二日
下P20正木、若林両博士の会見
二年前に実母を殺害
- 八代子(やよこ)
呉一郎の実母の姉、呉モヨ子の母
(下P32◆心理遺伝論付録◆………各種実例)
大正十三年四月二日午後零時半頃
(呉一郎(十八歳)母千世子(三十六歳)の初七日仏事終了後)
- 千世子
十七で女学校を出て明治四十年の正月に置き手紙で八代子と別れ東京へ、明治四十年の暮れに一郎を生む(この辺は下P50の八代子の述懐より)
- 呉一郎の伯母八代子(三十七歳)
早くに母を、十九の正月に父を亡くし、十九の年の暮れに源吉と結婚。(この辺はP50より)
二十三で離婚か死別、モヨ子を産む
- 鴨打(かまち)
呉一郎の中学時代の教師-谷
警部
- 松村マツ子
福岡の翠糸女塾(すいしじょじゅく)主
十七八の千世子が虹野ミギワと名乗って半年ばかり通った。
下P74周辺
若林、正木両名ともに呉一郎の犯罪は夢中遊行によると判断
- 狸穴の先生
占者、千世子が信じた
- 戸倉仙五郎
姪の浜花嫁殺し事件のあった大正十五年四月二十六日時点で五十五歳
呉八代子の常雇い農夫
事件前日の呉一郎の挙動はP86
- 宗近
事件の日に呼ばれた医師
- 野見山法輪
巻物を収めた如月寺住職
(下P102青黛山如月寺縁起(せいたいざんにゅげつじえんぎ))
- 坪太郎
茶舗美登利屋(ちゃほみどりや)を営む坪右衛門の息子、跡は継がず。
雅号空坪(くうへい)。
出家、延宝二年春四月二十六歳肥前唐津に着く。
名を虹汀(こうてい)に改める。
- 六美女(むつみぢよ)
呉家の女
- 勝空(しようくう)
僧
- 雲井喜三郎
唐津藩家老職の三男
- 脇野軍平
石工、妻ミツ
(下P129呉一郎の精神鑑定大正十五年五月三日午前九時]
- 大塚
警部
- 鈴木
予審判事
(下P133解放治療場に呉一郎が現れた最初の日(大正十五年七月七日撮影))
(二個エピソードを挟む)
(P143 遺言書終わり、現実へ戻る十時十三分)
- 正木
禿頭、眉無し赤黒く日に焼けた五十前後の紳士、高い鼻に大きな縁なし鼻眼鏡、骸骨そっくりの小男
- 小使の老人
(P197由来記)
黛の双子の妹
- 呉忠雄
青秀の子
- 浅田シノ
狂人
- 甘粕籐太
監視人、柔道四段
- そもそもの由来
呉青秀は状元、愛国心から玄宗に国の乱るるを語るべく妻黛を殺し、その死体の腐る様を描き献上しようとした。
実際やってみると腐る速度が早く六枚しか描けない。
更に絵を描こうと若い女を襲おうとしたり、死体を掘ろうとしたりするが民に見つかり上手く行かない。
放浪の末家に戻ると黛の妹、芬がいる。
芬と共に放浪していると遭難し、日本に着く。
その船上でふんは青秀の子を産み、青秀は投身自殺する。
- 事件の経緯
若林、正木は九州大学で主席を争う。
ある時ある伝説に興味を覚え協力して調査を深める。
キーとなる巻物は伝説の後胤、千世子が寺から盗んでいた。
姉、八代子と二人暮らしていた千世子だが、八代子の婿の源吉に迫られ困っていた。
美しい千世子に目を奪われた若林、正木は「個人から巻物を盗むのは難しいので研究はこれまで」と研究の終了を確認しあうも、それぞれ千世子へのアプローチを継続していた。
千世子は源吉のうっとうしさもあり、若林と共に福岡へ行き同棲。
しかし若林は千世子の隠し持つ巻物は奪えなかった。
正木は若林が肺病持ちであることを密かに千世子に伝え、自分を選ばせる。
その後千世子は呉一郎を産んだがそれが若林、正木どちらの子かは遂にあかされない。
ただし、千世子は巻物に一郎の親が正木であることを記していた。
千世子は子を産んでから正木に巻物は寺に戻した旨打ち明ける。
正木はそれをすぐさま盗み、千世子には適当な説明をして失踪、海外へ活躍の場を移す。
十年以上経ち、正木は心理遺伝の犯罪と偽装して千世子を殺す。
若林は法医学者としてそれを糊塗する。
呉一郎はおばである八代子を頼り、八代子の子であり、自身から見ていとこにあたるモヨ子と婚礼をあげる。
まさにその時、正木は因縁の巻物を一郎に見せる。
一郎は心理遺伝の発作により、モヨ子を殺す。
呉一郎は捕縛され、モヨ子は解剖に回される。
このとき実はモヨ子は生きており、若林の手により死体とすり替えられる。
モヨ子、一郎共に精神を病み九州大学医学部病院に入院する。
正木はこの状態から一郎を正気にすることを目指して狂人の解放治療なる治療を行っていたが、一郎は再び発作を起こし五人を死傷させる。
翌日正木は自殺する。
八代子は気を違え、如月寺を焼き焼身自殺する。
それから一郎は忘我状態で目覚め、自身が何者かを調べ、解明に至る。しかし、自身の過去ではなくあくまで探偵的に他人事としてそこに至るのみであり、またその過程においては過去の正木の幻覚を見ることになる。
一日の終わりにはまたすべてを忘れて、同じことを繰り返す。
そんな一日。