- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/06/01
- メディア: 単行本
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中公文庫
ミステリーは嫌いだけど、ミステリーじゃないし読んでみようと思った。
文字がでかい。これはかなり高速に読み終わるな、と思ったら本当にあっさり読み終わった。
やはり文章がやや過剰な装飾な気がする(カタカナのer切り捨て、yのィ、頻度の高すぎる奇妙な比喩)。こなれてないというか。
タイトルが変な読みになってるのもきもい。
- 映画との違い。
・少年時代の記憶がある。
・最後に草薙を殺す。
・ティーチャーは名前も出てこない。
・キルドレも程良く病んでる(ミツヤ、映画では普段は普通だが草薙に会って取り乱したように見えるが、小説では普段からたまに感情を吐露していたようだ)。
・最初にティーチャの戦闘シーン。
- 飛行機の操作について調べてみた。
かなり適当なんで、間違ってるかもー。
ステータス内容の部分は、水平に飛んでる状態からそのステータスをいじると何が起こるか。
ステータス名 | 変更する手段 | ステータス内容 |
---|---|---|
ピッチ | エレベーター | 機首を上下に振る |
ロール | エルロン | どっちの翼を下げるか |
ヨー | ラダー | 機首を左右に振る |
速度 | スロットル(フラップで急減速) | 加減速 |
速度が十分ではない状態で上を向くと、速度を失って翼が何にも効果を生じなくなる。もちろんエレベーター、エルロン、ラダーも効かない。これがストール。
紙飛行機が投げた時に、上に曲がる力が働いて「人」みたいに山なりに飛ぶことがあるけど、その頂点の状態。(?)
失速したら、少し落下して、速度がついて、翼が揚力を取り戻すまで何もできない。
と思いきや、プロペラの生じる空気の流れを翼にあてて、一部操作を効かすことができるらしい。
- 以下色々引用。
- クスミとフーコの外見(P63)
黒いミニの子は、名前をクスミといった。ストレートの髪が長くて、チョコレートみたいな顔だ。もう一人の白いワンピースの子は、フーコ。髪はピンクで短い。胸元にフクロウの入れ墨をしていた。声がハスキィで、最初は風邪をひいているのだろう、と思ったくらいだ。
- キルドレを見たとき連想する職業(P92)
僕たちパイロットは、もっと若い。それに比べれば、草薙は多少は落ち着いているかもしれない。しかし、一歩基地の外に出れば、今どき若い連中なんて本当に少ない。とても珍しい。若いことは、それだけで目立つ。草薙だって、十分に特別だ。
都会に行けば少しは誤魔化せる。しかし、少なくともこんな田舎では隠すことは無理だろう。若いだけで、キルドレだと思われてもしかたがない。そして、どんな仕事をしているのか即座に想像されてしまう。戦闘法人か、それとも、違法すれすれの宗教法人のいずれかだ。土岐野が最初の晩に連れていってくれたところだって、宗教法人に間違いない。そういうはっきりとした世の中なのだ。
この辺のフリが正直上手く使えてない気がするんだよね。一種異様な発展をしている文化、っていう。
あれ? となると、後で出るボーリング場の女の子は「違法すれすれの宗教法人」の所属で、「土岐野が最初の晩に連れていってくれたところ」と同じようなサービスを提供してるのかな?
- ニヒリスト?(P123)
仕事も女も、友人も生活も、飛行機もエンジンも、生きている間にする行為は何もかもすべて、退屈凌ぎなのっだ。
死ぬまで、なんとか、凌ぐしかない。
どうしても、それができない者は、諦めて死ぬしかないのだ。
- 固有名詞を覚えない人の言い訳(P268)
今まであまり意識しなかったことだが、僕たちがまえにいた基地は、兎離洲という地名だった。固有名詞を僕は覚えない。人の名前でさえ、すぐに忘れてしまう。もう、例のドライブインのウエイトレスの名前さえ僕は思い出せないくらいだ。地名も同じ。そこに住んでいても、半年くらいでようやく覚えかけて、逆に慣れると、かえって忘れてしまう。立ち去ったあとには、まるで思い出せない。人や土地と、その名前の文字を、結びつけることの必然性を僕は感じていないのだ。
- 理解されることに対する感想(P290)
人に理解されることほど、ぬるぬるとして、気色の悪いことはない。僕はそれが嫌いだ。できるだけそれを拒絶して、これまで生きてきた。
それは、たぶん……、
草薙も同じだろう。
- 戦う理由(P297)
「戦うことは、どんな時代でも、完全に消えてはいない。それは、人間にとって、その現実味がいつでも重要だったからなの。同じ時代に、今もどこかで誰かが戦っている、という現実感が、人間社会のシステムには不可欠な要素だった。それは、絶対に嘘では作れないものなんだ。本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない。いえ、平和の意味さえ認識できなくなる。戦争がどんなものだか知らないのに、戦争は絶対にいけないものだって、そう思い込ませるには、歴史の教科書に載っている昔話だけでは不十分。だからこそ、私たちの会社みたいな民間企業が、汚れ仕事を請け負っているわけだよね」「合理的だなぁ」僕はくすっと笑う。