王立宇宙軍 (オネアミスの翼)

初期ジブリ作品に匹敵する品質を備えた本格的SFアニメーション。とか言うと言いすぎ?


1987年公開。ちょっとアダルトなシーンが挟まってたりして、全然売れなかった。


制作は映画の為に設立されたGAINAX。「新世紀エヴァンゲリオン」の。
20代を主力として(監督山賀博之ですら24歳だった)この映画は作成された。


オネアミスの翼 〜王立宇宙軍〜」だったが、現在のDVDではタイトルは「王立宇宙軍」となっている。
広告会社の意向でオネアミスになったとか。


音楽監督坂本龍一
戦場のメリークリスマス」→「子猫物語」→本作→「ラストエンペラー」という流れで、「ラストエンペラー」でアカデミー賞の作曲賞を受賞。
メインテーマ以外は直接全てを作曲したわけではないらしい。民族音楽っぽく良くまとまっていると思う。


主人公の声優は森本レオで、最初は違和感があったけど観ていくうちに慣れる。

  • ストーリー

1950年代程度の技術を持つ地球的世界におけるオネアミス王国が舞台となる。
オネアミス王国には陸軍空軍水軍の他に宇宙軍という軍隊があり、宇宙開発を行っている。
オネアミス王国宇宙軍の若き士官シロツグ・ラーダット中佐が主人公。
中佐と言っても極めて人数の少ない宇宙軍なので、案外簡単になれるように見える。
(自衛隊だと中佐にあたる二佐は大隊長となり800人の上に立つ将官なので違和感があるが)


シロツグは新興宗教の信徒であるリイクニ・ノンデライコに出会う。
宇宙軍では緊縮財政の中、新たに有人宇宙飛行計画を立案する。
パイロットを募った際、リイクニにおだてられていたのが原因でシロツグが志願する。
シロツグと仲間たちは宇宙旅行の為にプロジェクトを進める。
王国中枢部やライバルである共和国の思惑が絡み、以下略。

  • 感想

民族色の強い世界で、どこか何かが地球と違う。例えば貨幣が棒状の金属(麻雀の点棒のようなイメージ)であったり、宇宙軍の正装に民族調レースが付いていたり。
航空技術等も地球とはやや異なった進化を遂げている。
この世界観は非常に完成度が高い。


主人公たち(宇宙軍士官)はどこか無気力な若者たち。だが、宇宙計画発動から皆一生懸命に働く。クライマックスに向けて盛り上がって行き、ロケット打ち上げシーンで最高潮を迎える。この辺は非常に綺麗にまとまっている。
一方、中盤は冗長と見える部分もあるかもしれないが、何度も見て慣れてるのでよくわからない。
飛行機が飛ぶシーンは非常に美しい。
大画面で観たら浮遊感があって楽しいだろうと思う。


ロケット発射の瞬間、液体水素/液体酸素が満載された燃料タンクの外部に出来た氷が衝撃でバラバラと落ちるが、あれは庵野秀明が書いたと言われている。
風の谷のナウシカ」に出てくる巨神兵といい、庵野秀明はコツコツした仕事が良くこなせるように思える。巨神兵の動きはあまり好きになれないが。

  • ロケット

ロシア式のロケットエンジンを束ねたクラスター形をしている。
大きなロケットエンジンは燃焼室の圧力が高くなり、技術的難易度が高かったためと言われている。
でもクラスターにしたら多数のブースターの燃焼のバラつきが出て結局苦労したそうだ。
発射の瞬間リューリップの花が開く様に支持架が開くところもロシアのロケット(R-7というらしい)そのものに見える。


wikipediaソユーズの項に写真があるので参考までに。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%BA