三国志6

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「いま天下の英才は、ことごとくこの地に集まっておる。襄陽の名士また、ひそかに卿の将来に期待しておる。この機運に処し、この人を用い、よろしく大業の基礎を計られたがよい」
「いかなる人がおりましょうか。その名を、お聞かせ下さい」
臥龍か、鳳雛か。そのうちの一人を得給えば、おそらく、天下は掌にあろう」
臥龍鳳雛とは?」
 思わず、身を前にのり出すと、司馬徽はふいに手を打って、
「好々、好々」
と、いいながら笑った。
 玄徳は、彼の唐突な奇言には、とまどいしたが、これはこの高士の癖であることを後で知った。
 日常、善悪何事にかかわらず司馬徽は、きまって(好々)と、いうのが癖だった。