小林・益川理論の証明

立花隆
朝日新聞出版

立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力

立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力

マスコミがいかにクズか力説。冒頭、I-3より引用。

マスコミ報道のレベルの低さ


 12月11日、テレビで小林誠益川敏英両氏のノーベル物理学賞受賞の様子を見ながらこの原稿を書いている。
 あらためて両氏の受賞におめでとうといいたいが、一方でこの数日間のメディアの受賞報道を見ていると、これはひどいと思わざるを得ない。話題になったのは「もっぱら益川さんは英語ができない」という話と、ノーベル賞メダルを模したチョコレートのお土産を大量に買い込んだ話、帰国後の記者会見で、本物のノーベル賞メダルは「そのうち庭に穴でも掘って埋めておきます」と語ったことくらいではなかったか。

I-5より引用。

 ということは、現代科学の最前線では、真空とは何なのか、存在とは何なのか、無とは何なのか、生成とは何なのか、消滅とは何なのか、同一性とは何なのか、といった、ほとんど哲学的といったほうがいい概念が物理学的リアリティの中で語られるような時代になったということだ。
 小林・益川理論の面白さとは、そういう世界の面白さなのである。
 それは、益川さんが英語が出来ないという話を何度でもバカのように繰り返す日本のマスコミ報道からはなにも伝えられてこない話である。


テレビは全く見なかったけど、まともな報道はなかったっぽいですね。
宇宙の成り立ちを説明するワンステップを作ったのに……。
やれやれ。


で、この立花センセの怒りの原因は他にもあって、これはこの連載が載ってた「科学朝日」(じゃなくて「サイアス」だな)が不採算を原因にあっさり廃刊になったことなわけですね。
なんで、この本の最後の方は、突然の廃刊で打ち切りになるので状況をある程度まとめて、あとは廃刊がいかに不見識か、批判する内容。それを載せた朝日新聞社も凄いし、それにも関わらずあっさり廃刊にした朝日新聞社も凄いし、それにも関わらずそれをまとめて出版した朝日新聞社に至ってはもう支離滅裂過ぎてわけがわからない。
やれやれ。


その前までは、理論的な説明と機械の説明をすごく良いバランスでしてて、僕みたいな素人でも分かった気がして楽しめました。連載が進むにつれてだんだんとパフォーマンスが上がって行って、ライバルに近づいていくあたりとか、小説っぽい構成もあったりして。
でも、2000年末に廃刊になったのでCP対称性の破れが証明された2001年は残念ながらナシ。


ともかく。
充分面白いのでおすすめ。